2006年10月28日
すっかりサッカー専用ブログとなってしまったので、たまには書評でも。(下記と同内容をbk1に投稿しました。) 本書は「将棋」というゲームについて、現在最高峰の棋士である羽生善治氏と、人工知能と認知科学の研究者である伊藤毅志氏、松原仁氏がそれぞれの立場から本質に迫った本である。 将棋になじみのない方には少し取っ付きにくい本であるが、羽生氏がプレイヤーとして語る内容を、コンピュータ将棋の研究者でもある伊藤氏・松原氏が科学的な解釈を加えて解き明かしていく本書の形式は、非常に整理されて理解しやすいものとなっている。 中でも興味深いのは、羽生氏が少年時代にどのようなトレーニングをして強くなっていったのか、そして将棋界のトップにいる現在はどのように先に進もうとしているのかを語っている点である。 将棋という一つのゲームで「上達する」ために努力する事は、どのような方法が「効率的に学習できる」かを学べる事になる。具体的な内容は本書を読んで頂くとして、この学習方法であればどんな分野でも応用が利き、「効率的な学習」が実現できるのではないかと思わせる内容だ(さらに科学的実証も加えているので尚更である)。 更に、将棋界史上最強である羽生氏が見ている世界やこれからの目標を語る言葉には、野球のイチローやスケートの清水宏保の様な最先端を行く人間でなければ語れない凄みがある。個人的にはこの節だけでも本書を読む価値があった。 後書きの羽生氏の言葉にもあるように、現在は将棋の真実に近づくと言う努力を人間とコンピュータがそれぞれ別の方法で行っている。それはトンネルを作るときに両方から掘り進めていくのに似ている。いつか両方の穴が合流して一つのトンネルが完成するのか、それともそれぞれ別の極地にたどり着くのか、今後興味深く見守っていきたい。
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