春との旅

2010年04月13日

先週の木曜日、道新ホールで映画「春との旅」の完成披露試写会を観てきました。最初に、監督の小林政広、主演の仲代達也、徳永えりの舞台挨拶がありました。仲代達也さんは、黒の詰襟のスーツ姿、手を後ろで組み足を若干広げて立った姿は、77歳とはとても思えない凛々しさです。小林監督の方が、年配のように見えるくらいです。そして、真中に立った徳永さんは、小さくて可愛らしかったですよ。あのブラッディ・マンディの彼女とはねえ…


増毛の浜辺で暮らす元漁師で頑固者の忠男と孫娘の春。二人は、疎遠となって久しい忠男の肉親に会うため、増毛から仙台までの旅に出ます。映画は、忠男が血相を変えて家を飛び出し、そのあとを春が追いかけるシーンから始まります。しばらくの間、ほとんど会話はなく、表情だけの演技が続きます。そして、タイトルバック。むむぅ、やられた…けど、春の子ども走りは、少し脚色しすぎかな!

春は、小学校の給食係として働いていましたが、廃校になり失業したばかり。思案の末、東京に働きに行こうとしますが、忠男は一人で生活できない身体です。そのため、忠男は肉親の世話になろうと旅に出るわけです。気仙沼の兄夫婦、服役中の末弟の内妻、鳴子温泉で女将をしている姉、仙台で不動産業に行き詰っている弟。それぞれにドラマがあります。彼らに会うことにより、忠男や自殺した春の母親の過去が露わになります。

そして、旅の最後に、春は、静内に住む父親を訪ねます。絶対に合わないと誓っていた父親に…

時折、挿入される風景や全編を流れる佐久間順平のテーマ曲が、とても美しく、映画を印象的なものにしています。台詞のあるシーンとないシーンのコントラストが見事です。特に、終盤のそば屋での忠男と春の会話のシーンは見事な演出です。過去にそば屋に来た時のことを話し始める忠男。それを聴き涙があふれる春。5分ほどだと思いますが、ワンカットです。二人の魂のこもった演技が胸を打ちます。

そば屋は、旧門別町の富川にある「いずみ食堂」です。浦河に住んでいるとき何度か食べに行きましたが、とても美味しいそば屋です。特に鴨そばが絶品です。

仲代さんは、脚本にほれ込み出演したそうですが、これまで出演した150本の中でも5本の指に入る作品だとも言っています。確かに仲代さんの演技は格別です。意気地なしで、寂しがりやで、文句ばかり言ってるけど、放っとけない老人を、自然に演じています。徳永さんの真剣な演技にも、心打たれました。そして、演技派といわれる出演者のそれぞれの演技に感嘆しました。

春との旅は5月22日に封切りです。


20100413-01.jpg  2010年(134分)
  監督:小林政広

  出演
  仲代達矢、徳永えり、大滝秀治、菅井きん、
  小林 薫、田中裕子、淡島千景、柄本 明、
  美保 純、戸田菜穂、香川照之