F1ドライバー列伝VOL10

2005年12月28日

久々の列伝です。相変わらずマニアックです。今回はちょっと力作です。興味のある方は是非ご覧くださいな。



とうとう10人目です。本当に誰について書こうか迷いに迷いました。ネタはないかとF1サイトを巡っているとあるニュースが入ってきました。それを取り上げなくてはいけないと思うし今後の彼のレースを応援したいし、そう思い今回のブログはそのドライバーを紹介します。

Takuma Sato    佐藤琢磨

レーシングドライバーとしてのキャリアスタートは遅すぎる20歳から始めた琢磨。でもわずか5年でF1に上がれるのだからこの人の持つポテンシャルは計り知れないものがあるといわざるを得ない。

モータースポーツを始める前には自転車競技をしていたのは良く知られている話。でも、もともとは大の車好きで小学生の頃には鈴鹿でF1を観にいっていた。そしてセナに憧れを抱くようになる。

96年、ホンダが主催するレーシングスクール「SRS-F」に入校、同期には金石年弘や松田次生らがいた。そんな彼らに対して琢磨は圧倒的な速さを見せつけ97年首席で卒業する。

98年全日本F3に参戦するも免停中に免許取り消しになる交通違反を犯し、国内レースに出走できなくなってしまう。そこで琢磨は一日も早くF1ドライバーになるべくイギリスに渡ることを決断、シーズン半ばに渡英した。

99年にはイギリスのジュニア・フォーミュラなどのカテゴリーを経験し、2000年からイギリスF3にステップアップ、01年にはシリーズチャンピオンを獲得した。イギリスF3王者は83年はセナ、85年はグージェルミン、87年はハーバート、90年はハッキネン、91年はバリチェロ、96年はR・ファーマン、00年はA・ピッツォニアなどF1ドライバーがこのカテゴリーからステップアップしている。琢磨のその仲間入りを果たした。

それで終わりではない。01年の国際F3レースであるマールボロマスターズとマカオGPでも優勝しF3ドライバーとしての頂点を極めることになった。そして満を持して2002年ジョーダンからF1デビューを果たす。

とはいってもこの年のジョーダンはチーム状態が最悪だった。序盤はリタイヤが多く終盤になって完走することが出来るようになり最終戦の日本GPで5位入賞にとどまった。

03年B・A・Rホンダに移籍、待遇はリザーブドライバー、レースに出れない日々が続いたがその年の最終戦鈴鹿で琢磨がレースに出ることが出来た。予選13位、決勝6位。1年間のブランクがあるとはいえ最高の形でこの年を締めくくることができた。

04年B・A・Rホンダのレギュラードライバーに昇格、この年の琢磨は暴れまくった。バーレーンGPでは日本人予選最高グリッドタイの5位に付け、スペインGPでは日本人予選最高位3位を記録すると思いきやヨーロッパGPでは予選2位を獲得、日本人初のフロントローについた。そしてアメリカGPで3位表彰台に上がった。90年の鈴木亜久里以来の快挙を果たした。

この04年の活躍で05年の成績にも期待を持ってしまったがそうはいかなかった。クルマのトラブルやチーム内のゴタゴタで思うように走ることが出来ないでいた結局1ポイントしかあげる事ができなかった。そしてルーベンス・バリチェロが来期加入するために琢磨は移籍を決断する。鈴木亜久里が監督を務める「スーパーアグリ・フォーミュラ1」だ。何とか来年参戦できそうなので琢磨の勇姿が見れることになる。

だが噂されているように来年のエンジンはホンダエンジンを使えるとしてもシャシーが「4年落ちのアロウズ」であるために苦戦は免れることは出来ない。その中でいかに光るものを見せるか?琢磨の来期はそこにかかってくる。頑張ってほしい。

そして12月23日に琢磨夫人が男の子を出産、パパになった。ますます頑張らなくてはいけない。

琢磨はなぜこれまでの日本人F1ドライバーと違って好成績を収めたのだろうか?

色々理由はあるだろうがひとつは「海外のカテゴリーを経験」したことが一番大きいと思う。中嶋悟にしろ、鈴木亜久里にしろ、片山右京にしろ「日本国内で」実績を挙げたが海外経験はF1が初めてだった。琢磨はイギリスF3を経験し、日本の外の空気を知ったことが後に生きる結果になった。そして「卓越した英語力」も見逃せない。あれほどの英語力は過去の日本人にいなかった。メカニックとの意思疎通を図れることも大きな武器になったのだろう。

ここで04年のヨーロッパGPを振り返ってみたい。このレースは終盤バリチェロをパスしようとした琢磨がバリチェロと接触しそのレースをリタイヤしたというものだ。

このレースの直後琢磨は散々叩かれた。「危険なドライバー」というレッテルを貼られてしまった。「あそこで我慢すれば・・・」という意見も多く出た。そうすればアメリカではなくてニュルブルクリンクで琢磨の表彰台を見れたかもしれないからだ。

僕の見方は琢磨を擁護する。あそこは「攻めて当然」だったと今でも思う。琢磨の判断は間違っていない。琢磨はレースをしているのであって「安全運転」しにきているわけではない。もしセナがそのレースを見ていたらきっと琢磨を褒めていただろう。きっとアイルトンも同じ判断を下すと思うからだ。レーサーは前に言ってナンボ、レースに勝ってナンボの世界、琢磨がレースに勝つために、少しでも順位を上げようとすることは間違っていない。絶対に間違ってはいない。

琢磨のレースの中でベストはどれか?はっきりいって無い。むしろこれからベストレースを作るだろう。ベストレースはもちろん「勝つ」レースだ。琢磨は勝てると信じている。その日が来るのを首を長くして待とう!!

以上で終わります。いかがでしたか?楽しんでいただけましたか?ここでこの「列伝」はいったん終了します。年明けに「2006年参戦チーム分析」なるものをしまして、そのあと「F1ドライバー列伝VOL11」を展開いたします。そしてシーズン開始と共にそのレースを個人的に分析していこうかなとも考えています。



この記事に対するコメント一覧

みかんちゃん

Re:F1ドライバー列伝VOL10

2005-12-28 09:16

来季の琢磨には期待しています☆ 亜久里と琢磨の2人でどこまでいけるのか、 来季は無理でも近い将来、表彰台の中央に登ってほしいと思ってます。 今シーズンはあまりF1見られなかったんですが、 来シーズン(もう今シーズンなのかな?)は すべて見ようかなと思ってます。 もしかしたら琢磨の表彰台見られるかもしれないし…   でも、私はライコネンファン…

say

Re:F1ドライバー列伝VOL10

2005-12-28 10:40

来季マシン開発の遅れでいろいろな噂がありますが、 V10はアドバンテージがあるようなのでチャンスがあるかもって期待してます。 ちなみに中嶋、右京はF1の前に海外レースの経験はありますよ。中嶋はヨーロッパF2やF3000に参戦していますし、右京もフォーミュラ・ルノー・フランス国内選手権に参戦しています。右京が「カミカぜ」と呼ばれるようになったのもこの時代ですし、中嶋もF2のスポット参戦にも2位の好成績を残しています。F1参戦の前年にはF3000で国内と掛け持ちだったのフル参戦ではありませんでしたが7戦と多くのレースに参加してました。 日本人がF1で今まで成功しなかったのには 語学の問題よりも大きな要因がありそうですよ。 最近はあまり目にしなくなりましたが、 今から20年近く前にはアジアに対する偏見を 感じられる記事を目にしましたから。 政治的なこともいろいろあるようです。 実際いろいろなことがあったようです。 ドライバーは口にしませんけど。 日本企業の台頭やドライバーたちが積み上げてきた ものが少しづつ環境と代えてきていると思います。 だって琢磨はF3のチャンピオンと獲ったときドイツも フランスもF3のチャンピオンは日本人でしたからね。 今回亜久里がチームを作る時の話によい環境でレースをしてもらいたいって話がありましたが、そんなこともあるのだろうなぁと個人的に思いました。 ちなみに過去にもF1で成功しそうな日本人は何人もいたと思います。あのラウダとシートを争ったドライバーもいたのですから。

TAK

Re:F1ドライバー列伝VOL10

2005-12-28 20:35

琢磨は名前が似ているので勝手に親近感を持っています(^^) 琢磨のアグレッシブな走り私は好きですね。ときには「それはどう考えても無茶だろ~」っていうのもありますけど、オーバーテイクしてパスしていく姿がF1の魅力を物語っています。 最近あれだけ1対1の勝負をするレーサーって少なくなりましたからねぇ。

ダイ

Re:F1ドライバー列伝VOL10

2005-12-29 14:24

レスをつけますよぉ。遅くなったけど(爆) >みかんさん 06シーズンはしっかり見ましょう!!次回はキミについて書こうかなぁ? >sayさん 中嶋さんはともかく右京さんがフランスで走っていたことをすっかり忘れていました(謝) ちなみにスーパーアグリはV10エンジンではなくV8です。トロ・ロッソだけがV10ということですが色々と物議をかましていますからねぇ。 >TAKさん 名前が似ているんですか・・・「たくまろ」とか?(爆)琢磨は本当にレースをしていますねぇ、なかなか抜けない今のF1の中で果敢にオーバーテイクを試みようとするその姿勢は本当に素晴らしいです。 てか今回もはずしたかなぁ?う~ん・・・どうしよう・・・

鈍足の貴公子・ふみち

Re:F1ドライバー列伝VOL10

2005-12-29 21:41

遅くなってすみません。 (川井ちゃん風に言うと)琢ちゃんですね。 今のF1界って、レギュレーションの関係もあるけれど、無理な勝負をせずに、最後まで走ることが重要になってきていると思う。 その中で、琢磨のようにアグレッシブな走りをし、常に前の車を追い抜くことを考えるドライバーはいなくなった。 そのため、日本だけ出なく欧州のファンからも琢磨は愛されている。 印象に残るレースというと、レースじゃないけど2004年のヨーロッパGPの予選ですね。 「日本人でも、できるんだ」というのを実感できた瞬間。ホント「マイケルさえいなければ。。。。。」状態でした。 来年、スーパーアグリで参戦できることを祈っています。そのときのパートナーは、アンソニー・デビッドソンで。(イギリスF3でチャンピオンになった年のカーリングチームのパートナー) BGMはもちろん「SCORPIO RISING」(布袋寅泰)

ダイ

Re:F1ドライバー列伝VOL10

2005-12-30 01:02

>ふみちさん あなたがコメントを出さないとこのコーナーは締まりません。ありがとうです。確かにヨーロッパGPの予選は惜しかった。初ポールを取れるチャンスだったんだけどねぇ・・・欧州ファンに負けないで僕たちも琢磨を応援しよう!!

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