2010年05月03日
昼の営業中、突然親父から電話が来た。 最後にもらった電話は義妹の母が亡くなったという内容。 まさか、が脳裏に走る。 「葉わさびいるかー。いるならこれから刈って持ってく。」 よかった。 もう70を超えて足元も厳しくなってきて親父。 それでもわざわざ出向かせるほど、俺は実家に顔を出してない。 昼の営業が一段落して飯をかっこんでいる時に親父が店に来た。 葉わさびはあーせいこーせい、とたわいのない話。 親父とはいつもそうだ。 何も言ってくれない。 俺が札幌を離れて京都で暮らそうという時も「酒飲み過ぎるなよ」の一言だった。 結婚して、子供ができて、病気をして。 歳を重ねるごとにふと顔を上げると親父の背中が見えたような気がした。 あの時、あんな時。 親父は俺と同じ風に感じていたんだろうか。 小学校も終わろうとする頃、俺の頭を撫でる母や父の手が煩わしくて、険しい顔をして振り払っていたのを思い出す。 今、俺が息子にそうしているから。 そして息子もそうするだろうから。 ほたほたと親父は店を出て行った。 次会うのはいつだろう。 次会えるのはいつだろう。 次、いつ会おう。 自分の親不孝ぶりに涙が出た。 すいません、ごめんなさい。 夕べ寝ていると、寝返りをうった息子がその手を俺の額と右の手に乗せた。 なんだか誰かに許されたような気がした。 今日の親父の気持ちがわかるのはあと30年先。