EPISODE.1 - 藤田 征也

2009年02月18日

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“サッカー選手になりたい”

小学校の卒業アルバムの「将来のゆめ」には、そう書いた。
藤田征也、21歳。
コンサドーレ札幌ユースU-18から、06年にコンサドーレ札幌へ。
早くから各年代の日本代表チームに選ばれ続け、中学卒業時には数多くのJリーグのユースチームからスカウトされた北海道きっての逸材だ。
07年にはカナダで開催された20歳以下のワールドカップにも出場。
スピード溢れるドリブル突破で右サイドを疾走し、勝負を決めるラストパスを蹴りこむ。
国内屈指のスピードスターが、この北の大地から世界を見据える。



「ちゃんとサッカー部に入ってプレーをするようになったのは小学校3年生のときからなんですが、それ以前にも物心がついたときにはもう、ずっとサッカーボールと一緒に毎日を過ごしていましたね。別に親がサッカー好きだったというわけでもないですから、きっかけは全然わからない。それから今日まで、ずっとサッカーのことばかりを考えて生きてきました。サッカーを辞めたくなったこと? そんなのあるわけないじゃないですか」


試合中、グラウンドの右サイドに立つこの男の表情は、まさに獲物を目の前にした獣のそれだ。だが、ひとたびグラウンドを離れてシューズの紐を緩めると、屈託のない笑顔ばかりがこぼれる。そして宝物を磨くかのようにシューズについた土を丁寧に取り除いていく。何度も何度も、時間をかけて。本当にサッカーが好きなのだろう。
“サッカー選手になりたい”と夢見た少年が、日の丸を背負う大役も果たしながら、見事にその夢をかなえてみせた。幸せな人生、と言ってしまうのは簡単だ。この男だって、普通の人間。ナンバーワンでもスペシャルワンでもない。当たり前のように壁にもぶつかった。


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壁を乗り越え手に入れた、
絶対的な“スピード“という武器。

「中学のときからずっと年代別の日本代表チームでプレーしていたのですが、高校2年生くらいの時期からしばらく選ばれなくなったんですよ。
そのときは『まあ、こういう時期もあるか』と思っていたのですが、同時期に、コンサドーレの方でもトップチームの練習に呼ばれなくなってしまったんです。自分では特別そんな意識はなかったんですけど、油断や奢りがあったということなんでしょうね。日本代表に選ばれるのも、コンサドーレユースで試合に出るのもごく当たり前のことだと思ってしまっていましたから・・・。そしてコーチにも『お前、いまのままじゃヤバイぞ』と突き放されてしまって」


だが、ここで自分の甘さと向き合えたことが大きなターニングポイントになった。「伸びた鼻をボキッとへし折ってもらえた」と振り返る。
それからは毎日を、そしてひとつひとつの試合やトレーニングにすべての意識を注ぐようになった。そしてプロになった今でも、日々、自分の甘さと向き合うようにしている。
髪をなびかせて華麗に右サイドを駆け上がる藤田を形成してきたもの、
それは自分自身との戦いだった。


「Jリーグが始まったのはボクが6歳のころ。華麗なテクニックで観衆を沸かせたり、楽しませてくれるような選手が大好きでした。そういう選手のプレーを見てボクもサッカーを好きになっていったし、サッカー選手になりたいと思うようになった。だから、ボクのプレーを見てサッカーをもっと好きになってくれたり、コンサドーレでプレーしたいと思ってくれる少年がひとりでもいてくれたら、それこそプロサッカー選手にとっての最高の幸せかもしれないですね。
ボクは華麗なテクニックで観衆を楽しませることができるほどサッカーが上手ではありません。でも幸い、スピードという武器を持つことができた。
だから、走るんです。走るしかないんです。
ボールがラインを割りそうになっても、敗戦が濃厚になっても、一歩踏み出すことで何かを変えられるかもしれない。最後まで諦めなければ、色々な可能性が生まれるはず。だから走る。
スーパーなプレーはできないかもしれませんが、最後まで走り抜ける、それだけは約束できます」


昨年、目標としていた北京五輪への出場は叶わなかった。ケガに泣き、J1残留に貢献することもできなかった。悔しさばかりの1年だった。
それでも、藤田はまた走り出す。いや、だからこそ走るんだ。
日の丸を、そして札幌を背負って立つ覚悟はできている。
今ではそんな藤田の背中を見て、子供たちが厚別競技場や札幌ドームの、さらには世界のグラウンドを夢見る時となった。
右サイドを走り抜ける藤田の足跡は、北海道民の夢への架け橋だ。

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Name : 藤田 征也 [Seiya FUJITA]
Age  : 21
From : SAPPORO
Number : 7
Position : MF



post by 2009 選手スペシャルインタビュー

13:00

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