ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2008年10月03日

ゾーンディフェンスを考える。の4回目です。
(※今までのものは↓)
ゾーンディフェンスを考える。 -その1-
ゾーンディフェンスを考える。 -その2-
ゾーンディフェンスを考える。 -その3-

今回は、札幌における三浦監督のゾーンによる守備戦術について分析を試みます。



まず、三浦監督が用いている中盤を横に並べる4-4-2の並びを確認します。(※図1)


◎図1(4-4-2の並びとゾーンの意識)
(●・・・選手)

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守備時は、4-4-2の2ラインを自陣に退き気味に敷いて、
4-4を出来るだけコンパクトにして自陣を均等に8等分したゾーンに配置します。
図1を見ればわかるように、初期配置の状態で自陣にスペースはありません。
この点は、札幌における三浦監督の戦術が他のゾーンとは違う点であり、
長所でもあり短所でもあります。


まず、なぜ横並びの「4」なのかという点ですが、
これは、「3バックは両サイドにスペースがあるので、サイド攻撃をしろ」という
サッカーの定石からもわかるように、ピッチの横幅に対して守備側は、
3人だと少なく、4人がちょうど良いということなのです。
当然横に5人以上並べても守れますが、サッカーは攻守が一体なので、
守備に人数をかければ、攻撃時に人数が減ることになります。


少し脱線しますが、3-5-2は、中盤の両WBが最終ラインに吸収されて
5バックになりがちなため、守備的な布陣といわれています。
また、2002年W杯時、トルシエ監督が用いていた「フラット3」という
3バックなのに横に並んでラインディフェンスをするというやり方は、一般的ではありません。
(※今現在、当のトルシエ含めてやってる人は、ほとんどいません。)
3バックの場合、以前書いたように二人のストッパーの後ろにスイーパーを置く形が普通です。
ただ、この場合、ラインディフェンスを敷かないので、ラインコントロールが出来ず、
オフサイドが取りにくいので全体をコンパクトにしにくくなります。


閑話休題。
選手間のバランスを重視すると、自陣に相手に使われるスペースを生み出しにくい。
(ただし、守備時にはすばやく初期陣形に戻らなければ隙が出来るので、
GKを除くフィールドプレイヤーが、攻守の切り替え時に
縦にハードワーク(激しい上下運動)しなければいけません。下記参照。
クライトンと三浦監督。)
しかし、バランスを維持することのみにこだわると、ボールホルダーに
十分なプレッシャーがかからずボールホルダーを自由にしてしまいます。
これがJ1では、選手の基礎的な技術が高いために
J2よりも自由にクロスやミドルシュートを蹴られる結果になっています。

また、ゾーンディフェンスは、相手の攻撃を受けて立つので、
特に速い選手、後ろから飛び込んでくる選手に対して守りにくい。

では、これらを解決するためにゾーンの意識を弱めて、
より人に付いて行くようにしたとします。
すると今度は、ゾーンにギャップが生まれて僅かですが自陣にスペースができます。
昨季のJ2時代も、京都のパウリーニョなどにそこをつかれたことはありました。
上手い選手は、僅かなスペースをつくりそこをこじ開けてきます。

このバランスが、ひとつのジレンマであることは間違いないです。
将棋は、初期配置が最も堅いといわれていますが、それと似ています。
初期配置では隙がないのですが、そこから攻めたり守ったりするには
駒(選手)が動かねばなりません。
しかし、そこから駒(選手)が動くと隙が出来るため、できるだけ初期配置を維持する。
そうすると、こちらから積極的に攻めることが出来ず、相手に厳しく付いていく守備もしにくい。


オシムが、リスクのないサッカーはつまらないと言っていましたが、
この4-4-2のシステムは、リスクをとりません。だから、面白くない(笑)。

しかし、布陣を維持するために攻守にハードワークが必要ですが、
守備は機能すれば、隙がないので理論的には、素晴らしく堅くなることだけは間違いありません。
それに、攻撃も選手間のバランスが良いので、効率よくカウンターができます。
また、つまらないサッカーですが、実績は申し分ありません。
このシステムを用いたヴァレンシアのクーペル監督は、99-01の2年連続、
欧州CL(チャンピオンズリーグ)で準優勝しています。
04-05シーズンに、チェルシーのモウリーニョ監督がこの戦術を用いて
イングランドの国内リーグとカップの2冠に輝きました。
(※これが一般的に普及するきっかけといわれています。)

この話をすると決まって、欧州の強豪クラブだから実現できるのであって、
札幌では出来ないという批判がきます。

確かに、機能させるためには自陣に退き気味に構えるとはいえ、
ラインコントロールをしてDFラインを上げて全体を縦にコンパクトにし、
選手間のゾーンのマークの受け渡しもスムーズに行う必要があります。
しかし、現代サッカーはスペースを生み出さないようにするため全体的に縦に
コンパクトになっていて、ラインコントロールとゾーンディフェンスは必須の技能です。
できないならやらなくてもいいという類の守備戦術ではありません。
しかも、現在の札幌は欧州レベルの完成度を求められているわけではありません。

また、4-4-2というシステムは、一般的に採用されていることからもわかるとおり
非常にオーソドックスな布陣です。
ある程度これを機能させることが出来れば、今後応用、発展させやすい。
(※例えば、4-2-3-1、4-3-3など)

そうはいっても、やはりこの戦術は難しいと思うかもしれません。
しかし、他のJ1クラブと比べて個人の技量に劣る札幌が、
ハードワークもせず、頭も使わないで、どうやって他のJ1クラブと戦うというのでしょうか?
技量で劣るなら、相手より動き頭を使うしかありません。
まして、ある程度機能させれば、このシステムがJ1でやれる
ポテンシャルを秘めていることは、大宮時代の三浦監督が、
J1に昇格し2季残留して自身が証明していることです。
機能させることに価値がないシステムとは思いませんし、
浦和ならまだしも、大宮に出来ることが札幌に出来ないとするのは、
逆にあまりにも選手を馬鹿にしているのではないでしょうか。


今までも書きましたが、完璧な戦術などありません。
そして、個で劣るチームは、組織を磨いて戦術の穴をカバーして対抗するしかありません。
そのためには、時間がかかるので、監督や選手をコロコロ代えず戦術を浸透させる必要があります。
この4-4-2は、今後の戦術の基礎として学ぶ価値があると思います。

今季、児玉前社長曰くJ2で5、6番目と思われていた戦力にもかかわらず、
戦術でJ1にあがってきたチームが、その要となる曽田とブルーノとアルセウという
ディフェンスの軸を失っては、機能するものも機能しません。


長くなったので、その5に続きます・・・(・・;)


post by whiteowl

00:14

Tactics (戦術) コメント(7)

この記事に対するコメント一覧

プリオール

Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2008-10-03 13:53

今更ながらに ブルーノ居てくれたらと感じますよね。 声も良く出ていたし回りが良く見えてましたもんね。 回りを上手く使うためのコーチング出来る選手いませんもんね! 来期は 曽田も帰ってくるでしょうしもう一人良いSBとCHほしいですね。 僕的には ユーロのスペインのようなどこからでも守れてどこからでも攻撃できるチームが理想です。 どの選手も よく動いていました。 たとえスター選手でも あれがこれからの目指すところなんじゃないでしょうか? 三浦さんのサッカーも みんなで守ってみんなで攻めるような事は言っていましたよね。

zenus

Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2008-10-03 16:44

ゾーンディフェンスが問題なのではなくて、 攻撃時に守備のことを考えて自分のゾーンから離れられないのが問題だと思いますね。 それはもちろんビルドアップの間にミスが多すぎるからで、簡単に相手ボールにしてしまいやすいので自分のゾーンを離れるとリスクが大きすぎるのが原因でしょうが・・・ クライトンにボールが収まった時は(クライトンは簡単にボールを失わず、前にパスを出せるので)サイドの選手が自分のゾーンから解き放たれて相手陣内に深く入っていけるのが非常に印象的です

whiteowl

Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2008-10-04 23:54

>プリオールさん >コーチング出来る選手いません そうですね。 これからSBとCHは絶対に必要ですね。 股抜きされるDFとか普通に恥ずかしいですから・・・(・・;) スペインサッカーは無理(笑)。 でも、全員守備でハードワークなことは確かです。 >zenusさん 確かに、攻撃も問題で、おっしゃる面はあると思います。 ただ、やはりJ1最多失点のDFをどうするかということの方が重要かと思います。

Headlight HID Projector

Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2017-08-28 17:35

ただ、やはりJ1最多失点のDFをどうするかということの方が重要かと思います。

Information

Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2019-09-29 16:01

するかということ

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Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2019-10-11 17:49

するかということ

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Re:ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

2019-10-25 15:40

するかということ

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