Jリーグ セカンドチームのJ3参戦を検討。コンサドーレ札幌は出ないの?1

2015年09月25日

セカンドチーム J3参戦を検討 Jリーグ若手強化策 
2015/9/9付日本経済新聞 朝刊
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO91522420Z00C15A9UU1000/
 Jリーグは22歳以下の若手選手の強化策について検討に入るため、8日の実行委員会で全52クラブに対し、「希望するクラブが若手でセカンドチームを組み、J3に参戦する」という改革案を示した。
 リーグ創設時に始めたサテライトリーグ(2軍戦)を経費削減のため、2009年限りで廃止した。その後は、高卒でプロ入りしたもののトップチームで出番に恵まれない19~22歳の若手をいかに強化するかがリーグの課題になっている。
==一部引用ここまで==
9/9の日経新聞紙面にJリーグの話題としては珍しく大きめの扱いで載ってました。
先日のJリーグラボで村井チェアマンが触れていましたので、
Jリーグ実行委員会で議論になったようです。
「セカンドチーム」と「2軍」を使い分けているあたり、
日経は押さえるべきところを押さえてるなあと、好感が持てます。


時事でも触れられています。
下部チームのJ3参戦案検討=Jリーグ(2015/09/24-18:53)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015092400782&g=spo
Jリーグの村井満チェアマンは24日、理事会後の記者会見でJ1、J2のセカンド(下部)チームをJ3に参加させる案を検討していることを明らかにした。今月のJ1・J2実行委員会で議論を開始したとしている。


ついてに、日刊スポーツの記事も触れておきます。
J1、J2クラブ2軍のJ3参戦を検討 若手強化へ
http://www.nikkansports.com/soccer/news/1535243.html

見出しに「2軍」という言葉を使っている時点で、メディアとして非常にガッカリ。「2軍」というのはプロ野球で培われた文化ですから、このメディアが主にプロ野球ファンに支えられており、彼らに伝わるような表現で見出しをつけているのが、実に残念です。私ならこの見出しでは記事を読む価値がないと判断します。


「2軍」と「セカンドチーム」には明確な違いがあることから話を始めます。

「2軍」
1)1軍の下部組織であり、若手の育成、1軍選手の調整の場
2)昇格降格しない

「セカンドチーム」
1)若手の育成の場がメイン。トップチーム選手の調整には使われない。
2)リーグ昇降格がある。ただしトップと同じリーグには所属できない。
 (トップが同じリーグに降格してきたら、強制的に1つ落ちるケースもあり。国によってルールが異なるのでこの限りではないが、昇降格がかかったクラブと対戦する「真剣勝負」の場を提供するという意味では、サテライトよりも遥かにマシです)


かつてJリーグにあった「サテライト」は「2軍」と同じ扱いでしたが、
このサテライト運営の終盤はひどい惨状だったことは記憶に新しいところです。
改めて振り返ると「サテライト」が廃止された理由は以下の2つに集約されます。
1)収入が少ない割に運営費(移動、会場、運営経費)がかかるため経営に悪影響
2)真剣勝負ではないので、出場選手の成長に効果が低い。

「セカンドチームを作るくらいならサテライトを復活」という声が上がりそうな気がしますが、それは「なぜサテライトが無くなったのか」を理解してない証拠ですので、いま一度Jリーグの歴史について調べていただきたい。
若手の成長に真剣勝負の場が必要なのはサッカーに限った話ではありませんので、ご理解いただけると思いますが、ただの練習試合や調整試合になっていたサテライトの復活など全く無用です。
(同様にJ2の翌日や裏でやる地元大学らとの練習試合は練習であって選手の成長を促すようなものではない。コンディショニング用ですね)


Jリーグのセカンドチームについて言及する前に、海外では先駆的例がたくさんありますので列挙していきます。

・スペイン
バルセロナは、育成組織から昇格した選手を中心としたセカンドチーム「バルセロナB」を持ち、スペインリーグに参戦している。良い時は2部まで上がってましたが、主に3部リーグ所属。バルセロナBといえば、グアルディオラ監督がBでの監督経験を積み、Bにいた選手をトップへ数名連れていき、黄金時代を築いたことでも有名ですね。2部にセカンドチームが上がってくることは珍しく、レアル・マドリッドなど他のクラブも似たような感じで、3部~4部をウロウロしてます。2015/16シーズンは1部クラブのセカンドチームが1チームだけ2部に所属。

・ドイツ
ブンデスリーガの各クラブはセカンドチームを持っています。そのうちの1つに元コンサドーレ札幌U18の選手(シャルケ04Ⅱ中川雄貴)が所属しているので、おなじみの方も多いかと思います。こちらもスペイン同様で、セカンドチームのほとんどが3~4部をウロウロしてます。U23の選手育成というのが主目的です。
ですがセカンドチームからトップに昇格することは稀です。各国のA代表が揃ったトップチームにセカンドから上がるというのはかなり突出した能力がないと厳しい。
なお、U19ブンデスリーガというのがドイツにはあり、地域を3つほどに分けて1年間戦います。これはプロリーグのピラミッドと別になっています。このため、U19を卒業して、トップやセカンドチーム、その他クラブに入ってこれるかどうかが、運命の分かれ道です。このU19リーグへ自腹で留学して入団する日本人がいますし、そこで認められて3部~6部のクラブに所属する日本人選手がかなり多いです。

・シンガポール
シンガポールリーグの1部に所属する場合、U23のプライムリーグのチームを持つことが義務付けられています。他にU18、U16なども同様に必須。このままだと「サテライトと同じ」で終わりなんですが、一味違うのが、シンガポールU18代表がこのU23のプライムリーグに参戦してることです。U18世代のトップクラスが、世代が上のリーグに所属してU代表の強化を行っているんですね。代表ではありませんが、J3に参戦しているJリーグU22選抜に似ているともいえます。その若手世代の育成の成果は・・・はい、日本代表がW杯アジア2次予選で引き分けましたので、一定の効果を生んでいると言えそうです。

・岐阜セカンド、岡山ネクスト、群馬チャレンジャーズなど
J2各クラブのセカンドチームと今回のセカンドチームの主旨は異なることは押さえておくべきだ。これらのセカンドチームは、大卒だったりトップアマチュアからJを目指して加入してくる選手が多いのに対し、Jリーグ実行委員会で挙げているセカンドチームは毎年のように世代別代表を供給してくる育成組織を持つクラブのセカンドチームであり、ユース卒~21歳で世代別代表を経験してる選手の伸び悩みを改善するものだ。
選手の育成という側面は同じだが、その対象が前者はトップチームへの供給を目標としているのに対し、後者はトップだけでなく世代別代表(U19~U23)も視野に入れている。
ユース世代のトップクラスだった選手の伸び悩みに対する施策なので、そもそも岐阜や岡山といったセカンドチームとは一線を画して考えるべきだし、Jリーグの手の届く範疇(J1~J3)の中で行われるべき。
下位カテゴリー(地域リーグなど)へ参加するしてそこからのステップアップなど意味がないのである。もし地域リーグや都道府県リーグに参戦しても、そこからの昇格枠を減らす結果になるだけで、既存のステップアップを目指すクラブからしてみれば、はた迷惑な話だろう。
そこにはクラブのステップアップと世代別代表の若手育成という異なる目的の上で昇格争いをすることになり、あまり得策ではない。
こればかりは、立場違えば見解も違うだろうから、何が正しいという結論を出すのは難しいが、セカンドチームのあり方の違いについては押さえておくべきだ。


事例はここまでとして、次にセカンドチームを作った場合の課題を挙げます。

1)セカンドチームはトップとは別登録となるので、それなりの選手数が必要
 (これは2種登録選手や特別指定を活用することになる見込み)
2)運営経費を独立するか、リーグから助成するか。
 (基本的に助成なしでよい。ただし育成目的なので助成あってもよいと思う)
3)トップとセカンドチームの登録と移籍
 (育成型期限付き移籍のようにフレキシブルな行き来が可能な方がよい。
  ただしJ3優勝争いのトップ選手参加禁止や出場選手による戦力差是正のため、
  シーズン後半はA契約選手が出場不可のような縛りは必要。)
4)J3ライセンスの適用
 (スタジアム規模、J入会金などJ3クラブと同じルールを適用するか)

さて、これをコンサドーレ札幌に当てはめながら、検証してみよう。

つづく。


この記事に対するコメント一覧

コメントする