2024年01月28日
集英社スポーツ総合情報サイトSportivaをご存じだろうか?
サッカーに関心があり、お手持ちのスマホまたはiPhoneで情報収集をされている方々にはおすすめ記事でピックアップされる機会も多いことだろう。
1月23日に吉崎エイジーニョ氏によるインタビュー記事が公開された。インタビュー相手は小林伸二氏。ギラヴァンツ北九州にて5年間スポーツダイレクターと監督を務め、昨年限りで退団したばかりである。
前後編に分かれた記事のタイトルがなかなか刺激的である。
「Jリーグ昇格請負人が悲痛な叫び「移籍の速さについていけない」 J2・J3「沼」の正体をギラヴァンツ北九州・小林伸二前監督が明かす」
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2024/01/23/j2j3/index.php
「Jリーグで進む残酷なヒエラルキー ギラヴァンツ北九州・小林伸二前監督「国内では1~2チーム、超ビッククラブを作る流れにある」」
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2024/01/23/post_10/
お時間がある時に是非一読頂きたい。そして震えて頂きたい。ギラヴァンツ北九州の現在はコンサドーレ札幌が辿り着くかもしれなかった袋小路であったことに。
ギラヴァンツ北九州はJ1にこそ上がっていないが、J2上位とJ3最下位を行き来する「ジェットコースタークラブ」である。J2参戦初年度となる2010年はシーズンを通じて1勝しか挙げることができなかった。ただ翌年三浦泰年氏に率いられたチームは躍進し、最終順位は8位となったが一時は5位まで順位を上げた。その後紆余曲折あり、昨年はJ3最下位に沈んだが辛くもJFL降格を回避している。J3最下位に沈み小林氏がシーズンホームゲーム最終戦で語った言葉が胸に刺ささる。
「本当に難しく、5年前に来た選手が我々にはひとりしかいません。(中略)しかしまだ選手を引き留めることができないんです」
実際ギラヴァンツ北九州は4年連続でチーム得点王が退団している。得点王の流出だけにとどまらず、情報収集で閲覧しているWikipediaでは年度ごとに「退団者の総得点は前年の●割超に相当する」という一文が挿入されるなど編集されているサポーターの悲しみを思うと胸が張り裂けそうになる。
その中でも小林氏は「昇格請負人」と呼ばれるだけあってチーム構築を進めていく。
「この北九州という地域がアグレッシブで、積極的なことを臨む地だと聞いて、やっぱりよく走る攻撃的なサッカーが喜ばれる。そう思ったんです。」
そうやって「地域に合うサッカー」を構築していった。ただそれでもサポーターを掴むまでには至らなかったようだ。
J3に再度降格した2021年、「胸スポンサーとなってくれるような大きな企業」の関係者から伝えられたエピソードがある。
「2年前に会社の人がギラヴァンツの選手のことを好きになった。でもどんどん選手が変わっていなくなるんだったら、誰を応援していいかわからないと言うんです」
選手の入れ替えが多く「個サポ」になりにくいうえに、勝利の美酒に酔いにくいチーム。大正義ソフトバンクホークスをはじめ、同県内にはアビスパ福岡がいる。主力を引き抜かれてもアカデミーからの昇格で埋めることができれば「生え抜き」選手への声援も得られて一石二鳥だ。
ただ現状はそうではない。アカデミーは22年に福岡県リーグ1部に昇格したばかりであり、高校生年代最高峰である高円宮杯プレミアムリーグウエストは12チーム中4チームが九州のチームが占めている現状では有力選手の獲得はおぼつかないようだ。
書けば書くほど背筋が寒くなる。
故石水勲氏が野々村芳和氏をコンサドーレの社長就任を勧めなかったら?
北海道というブランドを生かして海外に活路を見いださなかったら?
J1残留を果たした際に四方田監督からペトロヴィッチ監督に禅譲しなかったら?
そしてなにより博報堂DYMPと契約を結ばなかったら?
メディア露出ではファイターズと競い合い、雪の閉ざされる環境面から育成年代では選手のレベルにおいてまだまだ本州との間に高い壁がある。それより何より、チーム間移籍において物理的な壁があった。チームの勝利が前提にあったとはいえ、コンサドーレが変革に向かうスイッチを押した野々村芳和氏をはじめとした関係者の存在あったからこそ現在につながっているのではないだろうか。
記事のタイトルにある「Jリーグで進む残酷なヒエラルキー」は進んでいくだろう。その中でコンサドーレがどのような立ち位置を築くことができるか。
いちサポーター、いちファンクラブ会員として協力していきたい。
2024年01月13日
出入りの激しいオフが終わりを告げようとしている。 1月13日例年通りといえば例年通りであるが、オフィシャルサイトに契約合意選手ならびに契約合意スタッフのお知らせのリリースが出た。 https://www.consadole-sapporo.jp/news/2024/01/9684/ これをもって正式にミハイロ・ペトロヴィッチ体制7年目を迎えることとなった。一部で移籍の噂があった選手も無事契約合意となり、大幅な戦力ダウンとはならず上手くチーム編成をまとめたという印象だ。 さすがは三上GMと感謝申し上げたい。 前回も参考にさせていただいたミルクサッカーアカデミーさんが移籍の話題でコンサドーレを取り上げている。 その際にまとめていたポジション表を現状振り返りのために転載させていただく。 動画のリンクは下記になるので、ぜひ見てもらいたい。 https://www.youtube.com/watch?v=OAItiCKhquQ ミシャサッカーといえば複数ポジション担当、いわゆるポリバレント性が求められるため、昨季後半に引き続き浅野が右WBもカバーすれば各ポジションに複数名キープできている。清水から山原も獲得できていれば、田中宏武を右に回す余裕もあったかもしれない。とはいえバランスが良いチーム構成になったのではないかと個人的には考えている。 ちゃんと試合も見れていないし、データ分析などもできてない基本受け売りの個人的な感想であることは留意いただきたい。 今オフの補強で悲願のタイトル獲得に向けたラストピースと目されているのが、長谷川竜也の加入になるのだろう。 2016年の川崎フロンターレ入団以降、チームを変えながらもリーグ優勝やカップ戦制覇、J1昇格など「勝者のメンタリティ」を持っている選手と思われる。 戦力として計算できるかは、横浜FCから昨季途中J2東京ヴェルディへレンタル移籍となり先発出場していたが昇格後契約更新とならなかったことから疑問符はつく。ルーカスや金子のようにボールを持ってからの選手としてではなく、シャドーとして違いを見せる選手として考えておけば光るプレーを魅せてくれるのではないかと期待したい。 週明け15日から始まるキャンプを大きなケガなく乗り切ってくれることを祈っている。
2024年01月03日
1月3日の夜も更け、いよいよ日付も変わろうとしている。明けて1月4日が仕事始めであるという読者諸兄も多いことだろう。かくいう私もその一人である。この年末年始も移籍市場は動きを見せ、本日はジェフ千葉からFW櫻川ソロモンが横浜FCに移籍するというサプライズがあった。
横浜FCは同日、湘南からMF中野のレンタル移籍を発表するなど1年でのJ1復帰に向けて戦力補充に余念がない。24年シーズンは福森の左足からソロモンのヘッドというシーンが見れるかもしれない。四方田監督の手腕に期待したい。
仕事始めとなれば各チームフロントが、キャンプ前のお披露目イベントに間に合うように契約更新のリリースを進めていくこととなると推測される。すでにコンサドーレが触手を伸ばしていると報道があった清水のMF山原は契約更新が発表された。このように移籍の可否が明らかになっていき、翻って自チームの戦力の「穴」はいつ埋まるのだろうかとタイムリミットを見据えながらやきもきする2週間弱が始まるのである。
とりあえず報道ベースであればコンサドーレが獲得を狙っているという選手の白黒はついた。あとは水面下で交渉中の選手がいれば1月14日に行われるキックオフイベントまでに、何らかの報道やリリースがなされるだろう。金子ならびにルーカスのいなくなった右サイドが近藤だけで賄えるとは思えないので、できれば浅野の配置転換ではなく新戦力を補充してくれることを切に願っている。
2024年01月02日
まずはじめに被災された石川県をはじめとした北陸の皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様方の一日も早いご復興をお祈り致します。
また、今日の夕方に飛び込んできた日航機の羽田空港での事故につきましても、事故に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
今回の震災では現在開催中の全国高校サッカー選手権に出場している星稜高校も話題となっている。そんな育成年代を取り上げた記事に興味深いものがあったので紹介したい。
【2024年新年特別コラム】「そうさお前らは俺らの誇り」と叫ぶ日々。“ユースチャント”に込められた想い。前編
https://www3.targma.jp/akasyachi/2024/01/02/post107007/
赤鯱新報という名古屋グランパスを中心に記事をまとめているWEBマガジンの記事になる。
「どんなに辛く(つらく)苦しくても関係ねぇ そうさお前らは俺らの誇り さぁ行こう名古屋ユース」
https://www.youtube.com/watch?v=oDQjdajAXtk
詳細は記事を読んで頂きたいのだが、「どんな状況でも俺らが、俺らは、お前らを応援するからなっていう、全肯定ソング」であるこのチャントが生まれ歌い続けられている理由に、全国高校選手権の存在も関係していることが印象に残っている。強豪ユースの選手でも冬の全国高校選手権で高校サッカーが注目されるようになると「メンタルが揺さぶられる」ことがあるのだそうだ。そんな彼らに対して俺らがついている、俺らが見ていると伝えることが声出しの人数が少ないユースだからこそ必要なんだと思う。
コンサドーレユースにもユース専用のチャントがあり、高円宮杯プレミアムリーグ決勝やJユースカップ決勝の舞台でも歌われてきた。
「オゥオゥオオゥオー、札幌ユース、進め勝利へ向かって オゥオゥオオゥオー、札幌ユース、ともに歴史を作ろう」
https://www.youtube.com/watch?v=Pb8oH0mAm7E
ともに歴史を作ろうというフレーズは個人的に大好きで、現場では俺も一緒に戦っているんだ、一緒に頑張ろうという思いを込めて歌っていた。コンサドーレのチャントはトップであっても、「抑えきれぬこの情熱はたとえ敗れようと変わらない」であるとか「さあ行こうぜ道は険しくても」など逆境に立ち向かう印象的なフレーズが盛り込まれている。そんなチャントを作れるチームだからこそコンサドーレが好きなのかもしれないと、この記事を書きながら改めて思っている。
声出し応援が解禁され、にぎやかなスタジアムが帰ってきた。今年も新しいチャントが生まれることだろう。どんなフレーズが盛り込まれるのか。それを楽しみに今日は筆を置きたい。
2024年01月01日
何事もなかったわけではない2023年が終わり、何かが起きそうな2024年が始まった。
皆様いかがお過ごしだろうか?私はというと、この2行を打つまでタイプミスが多発し10分近く掛かっている次第だ。
そしてお供にしているTVでは、ちょうど日本代表がタイ代表相手に4点目を決めているところだ。前半は石井監督の戦略に従い耐えていたタイ代表だが、2点目から3点目の流れが悪く気持ちが切れてしまったところもあるかもしれない。ただでさえタイ国内では体験したことのない日本の冬。GKが前半途中からピッチに倒れこんでいたようにアウェイの洗礼を受けている状況下では仕方ない面もあると思う。「一矢報いる」という文化がタイにあるかは不勉強のため分からないが、まずはケガなく試合を終えてくれたらいいと切に願っている。
スパチョークも後半からピッチに立ち、貴重な経験を積んでいると思う。
…何様目線かはともかくとして。コンサドーレ代表として、これから始まるキャンプでチームに経験を落とし込んでくれたら何よりである。
…と書いたところで、南野がGKと1体1で外し、その次のプレーで改めてシュートを決めて5-0となり試合終了となった。うまく連携がかみ合わなければ0となり、連携がかみ合えば5点取れる。結果的にこれぞチームスポーツという試合となった。
コンサドーレは入れ替わりの多いシーズンとなっている。報道こそ出ていないものの、DF岡村大八には移籍の噂が絶えない。彼に移籍された場合、DFラインは昨年定位置を掴んだばかりの中村桐耶を残して総とっかえとなってしまう。右サイドも入れ替えとなり、連携の構築しなおしとなり前半戦は耐える展開をなる可能性が大だ。
何かが起きそうな2024年と冒頭に書いた。新戦力は振れ幅が大である。下に触れることもあれば上に触れることもある。なんにせよ年の初めである。私も般若湯をしこたま嚥下し、顔は達磨のごとく真っ赤である。酒精で霞む視界ではあるが本年の皆様ならびにコンサドーレのご健勝とご発展を祈念したい。
追伸
石川県の皆様、何事もないことを祈っております。
2023年12月31日
大晦日である。得失点の出入りに限らず所属選手の出入りも激しかったシーズンが終わりを告げようとしている。粉雪が舞い吹雪くなか買い出しに出かけ、もろもろ片が付きほろ酔い、いや激酔い気分で記事を書いている。PC画面越しには吉田類氏が饒舌に語らっており、ここ最近の年越しのお供として役割を果たしている。
大晦日であるので、今日の更新は自分の振り返りも含めてin-outをまとめてみようと思い立った。
画像を用いてわかりやすくまとめようと思ったが、PCスペックの問題から昨日も参考にした「ミルクサッカーアカデミー」の画像を参考に作成することとなった。
またリンクを貼っておくので、関心のある方はご覧いただきたい。
ちなみに元日の日本VSタイ戦については同時視聴配信をされるそうなので、関心のある方はお屠蘇のお供にどうだろうか?
下記のリンクからどうぞ。
https://www.youtube.com/@MILKsoccer_academy
さて今年の陣容の振り返りである。
下記が参照元であるミルクサッカーアカデミー、ノーミルク佐藤氏の労作を参考にした、もといスクショしてきたものである。
そして、12月31日時点の公式リリースならびに報道を参考に追記したものが下記になる。
小柏、田中ならびに金子・ルーカスの穴は埋めようがないものの、U-22代表である近藤や岡村大八2世となりうる家泉など戦力補充は進んでいることが見てとれる。それでも右サイドの「人手不足」は否めないので、右WBにもう1名追加できればベターと思われる。浅野を右WBにするのではという声もあるが、ドリブル技術で抜いていくタイプではないと思われるので、できればCFもしくはシャドーで見たい。
まだまだ予断を許さない移籍市場中盤。今回の記事が現在地の振り返りの参考になれば幸いだ。
更新再開から間もない幣ブログであるが、更新のたびに100名近く閲覧頂き感謝のしようがない。来年も引き続きお付き合いのほど宜しくお願い致します。
2023年12月30日
12月30日コンサドーレから2件の移籍に関するリリースが出た。
1件はGK松原修平の水戸ホーリーホックへの移籍。もう1件はGK阿波加俊太の鈴鹿ポンイントゲッターズからの「復帰」である。
松原からすれば悲願であったコンサドーレ移籍から2年。移籍について彼が綴ったコメントを見るに熟慮を重ねた末の決断だったことは想像に難くない。
水戸は正GKである山口に移籍の噂があり、松原にしてみればレギュラー獲得のチャンスといえる。彼の更なる飛躍を祈念したい。
他方、阿波加だが鈴鹿移籍後はケガで長期離脱を強いられるなど満足のいく結果が得られていなかったようだ。ただ7月からレギュラーをつかみ、JFL4位に食い込んだチームの躍進を支えた。この結果を示したことで三上GMからオファーが届いたのだと推察する。
その結果としてアカデミー出身GK一人が去り、一人が加わった。差し引きなしである。一見するとそう見えるが、視点を札幌というミクロからサッカー界全体というマクロの視点に広げることで別の見え方ができる。そう、なぜ松原に水戸から移籍のオファーが届いたのか?きっかけは今シーズン初の栄冠をつかんだヴィッセル神戸にある。
…ここまでしたり顔で筆の赴くまま書いてきたが、例のごとくネタ元はある。
クレイジーデータマンことノーミルク佐藤氏とお笑い芸人井上マー氏のユニット「ミルクサッカーアカデミー」である。彼らがYoutube上で12月27日に公開した動画タイトルが「【守護神玉突き移籍今年も大発生】移籍基準点は「居住非居住」で神戸とFC東京?!複数関与パターンの流れをさぐれ!」。この玉突き移籍の流れにコンサドーレも巻き込まれたのである。
下記にリンクを貼っておくので詳細はそちらを見ていただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=NOz1jfU5R2U
この玉突き移籍を文字に起こすと以下のようになる。
①【神戸】オビ・パウエル・オビンナを横浜FMから獲得
②【横浜FM】2ndGKオビだけではなく、1stGK一森もG大阪にレンタルバックとなるため山口から寺門、町田からポープウイリアムを獲得か?
③【町田】シュミットダニエルの獲得が失敗に終わり、水戸の正GK山口の獲得を狙っている?
④【水戸】移籍濃厚な山口の後釜、もしくは夏に提携先であるハノーファーへのレンタル移籍濃厚な春名の補充を図るべく札幌から松原を獲得
⑤【札幌】契約満了となった大谷、京都へ完全移籍となったクソンユンだけでなくもう1名抜けてしまうためGK4名体制維持のため阿波加を獲得?
④⑤は完全なる私見であるが、水戸の事情を考えると④⑤は独立した流れの可能性も高いかなとも思っている。
動画内ではFC東京に端を発した別の玉突き移籍に京都も巻き込まれていることも触れられていた。レギュラーは1名でもバックアップを含め複数名確保する必要がある特殊なポジションであるGK。さらに今年は、外国籍選手の税法上における「居住非居住」に関わる問題により、予期せぬ外国籍選手の契約満了や新規獲得の停滞が起きているようだ。実際コンサドーレもルーカスと望まぬ別れをすることとなった。出入りの激しいオフではあるが、まだまだ中盤戦であることを肝に銘じ、Xのタイムラインを更新するたび一喜一憂七転八倒踊り狂いたいと思う。
…何はともあれ右WBに近藤が入ってくれてひとまず良かった。
※この「居住非居住」に関する問題に関心がある方はご参考までに下記のリンクから確認を。
https://www.asadakaikei.co.jp/archives/17112
2023年12月29日
別れはいつも突然だ。寂しくはあるが悲しくはない。
29日、福森晃斗の横浜FCへの期限付き移籍がリリースされた。
先日岩本輝雄氏の呼びかけで開催された「左利きの会」に彼が参加した際には、フリートークの質問に答える形で「今、壁にぶち当たっています」と吐露していたという。詳細は引用元であるサッカーダイジェストWebを確認頂きたいのだが、「試合に出ること」にこだわってきた彼が現状打破を求めた結果が今回の移籍だった。
横浜FCは前コンサドーレ監督である四方田さんが監督を務め、コーチには同じ桐光学園OBであるウルトラレフティ俊輔中村が控える。四方田横浜は3年目を迎え、主力の流出は避けられていないもののチームは成熟期を迎えつつある。理解ある首脳陣の元、福森がどのような進化・深化を遂げるのか横浜FCの24年シーズンから目が離せなくなってきた。
さて、Xのタイムラインでは彼のフリーキック動画が数多く投稿され、コンサドーレのレジェンドの1人であることを再認識させれた。その中でも印象に残るフリーキックは2017年7月8日Nack5スタジアム大宮。あの日、コンサドーレとアルディージャの運命が交錯したと言っても過言ではないだろう。試合後に挙げられたアルディージャサポーターの試合動画を見ても分かるように、明暗がくっきりと分かれた試合となった。参考までに下記にリンクを貼っておく。
https://www.youtube.com/watch?v=O4PogCj5z-Y
引き分けに持ち込んだコンサドーレは残留圏である15位を死守。その後ジェイの加入を経て当時クラブJI最高順位である11位でシーズンを終えることとなる。この試合でゴール裏に掲げられたバナーのとおりコンサドーレは「生き残った」のである。
一方アルディージャはちぐはぐなシーズンを送り、残り3試合を残してシーズン2度目の監督交代を行ったものの好転せず最下位でJ2降格となってしまった。ついには今年降格の憂き目に逢い、来年はJ3で戦うこととなる。このような一瞬に出会えるから生観戦は止められない。現在は子供が生まれるなど生活環境が変わり、スタジアムになかなか足を運べてはいないが、「I was there!」と胸を張れる試合をまた見たいと切に願っている。
神はあの日大宮に居た。2本のフリーキックでコンサドーレを救い賜うたのだ。そして神はその御業をもって更なる民を救わんとなさっている。横浜の民よ。決して裏を取られたからと言って口汚く罵ってはならない。それはのちに与えられる救済への前奏曲に過ぎないからだ。横浜の民よ。左をカットされたからバックパスを選択したからといって消してため息をついてはならない。キーパーからのビルドアップを促しているだけに過ぎないかもしれないからだ。祈りたまえ。さすれば道は開かれん。そして神は勝ち点を与え、こう述べられるだろう。
「Tranquilo 焦んなよ」と。
Adiós pareja, nos vemos de nuevo.
2023年12月26日
良い話と悪い話、どちらから聞きたい?
安っぽいハリウッド映画に付き物の気取った言い回しだが、今日のリリースはまさにそんな感じだ。
12月25日15時。コンサドーレから2つの移籍についてリリースがなされた。
「小柏 剛選手 FC東京へ完全移籍のお知らせ」
「鈴木 武蔵選手 期限付き移籍加入のお知らせ」
どちらも各スポーツ紙の既報通りであるが、いってらっしゃい剛、おかえりなさい武蔵。
ケガで満足のいくシーズンを送れなかった二人であるが、環境の変化がどう出るかといったところだろうか。
何はともあれ噂の段階を含め今年は慌ただしいオフになりそうである。
ルーカス、小柏、田中に加え大八にも移籍のうわさがある様子。
契約合意選手の公表は他チームのように小出しに行わず、年明けにまとめて行うのがコンサドーレスタイル。
そのため期待と不安に苛まれる年越しを迎えることになるのだ。
クリスマスプレゼントには鈴木武蔵。
ではお年玉は誰になるのだろうか?
もういくつ寝るとお正月。
三上GMの手腕に期待したい。
2023年12月25日
2023年も残り1週間となったタイミングで、しかもクリスマスに4年ぶりの更新となってしまった。前回の更新も19年ルヴァンカップ準優勝を受けてのものであり、それだって間2年空いている。なぜ今更記事を書こうかと思い至ったかというと、きっかけは24日北海道新聞のスポーツ欄掲載された記事を読んだことだ。
「コンサドーレ 田中と福森が移籍へ」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/957003/
すでに各スポーツ紙で報道がなされており、いまさら何をと思われるかもしれないが「大本営」が取り上げたことで諦めがついたという感じだろうか。福森は福森で別記事で語りたいこともあるので今回は割愛するが、田中の移籍が記事作成のきっかけになった。
何が琴線に触れたかというと、彼の移籍により2019年入団の「大卒トリオ」がすべて退団することになったことだ。ミシャの招聘によりチーム歴代最高順位である4位フィニッシュやルヴァンカップ準優勝と実績を重ねた結果、成功した有力新人のリクルート。特に田中は大学在学中にU-23世代代表に選ばれる逸材だった。ルヴァンカップ準優勝したチームに彼らが加わることで、「見たことのない景色」を見ることができるのではないかと期待した。残念ながら勝負をかけた20年シーズンはコロナ流行に伴い満足のいく結果とはならなかった。戦力的にも相次ぐけが人の発生やソンユンや武蔵など主力の移籍によりJ1定着は果たせたものの、中位にも定着してしまった。そのようなシーズンを過ごす中で田中・高嶺・金子の3人に小柏を加えた「大卒4人衆」はコンサドーレの主力として活躍し市場価値を高め、遂に「収穫の時」を迎えることとなった。そう、彼らの移籍により一つのサイクルが終わったと感じたのが、記事作成のきっかけとなったのだ。
報道通りであれば、高嶺はすでに移籍金が発生する移籍を行っており、小柏は2億円、金子は1.6億円を産み出してくれる見込みだ。コンサドーレの年間売り上げは22年で36億534万円。23年度も同水準で推移していると考えた場合、小柏・金子の移籍金収入だけで10%分上乗せになる。
主力が抜けて順位も落ちて、最悪降格したら元も子もないという考えは理解できるし、負け試合を見るのはつまらないというのが本音のところだ。それでも地方クラブが生き残るためには移籍金をいかに稼ぐかが視点として欠かせないと考えている。三上GMもネクスト田中・金子としてDF岡田大和(福岡大)・MF田中克幸(明治大)を準備している。一足早く入団したFW大森(順天堂大)や25年入団予定のMF木戸(大体大)ともども主力として定着させ、リーグタイトルを狙いながら売り時を考えることとなる。
大森はけがに苦しんだ1年ではあったがルーキーイヤーに得点を挙げることができた。また、田中克幸は24日に行われた全日本大学サッカー選手権大会決勝で勝利を決定づける2点目をあげ、明治大の4年ぶり4度目の日本一に導いた。
正式な獲得発表がDF家泉のみと不安なオフを過ごされているサポーター諸兄。どうだろう、魅力的なルーキーたちだと思えてきたのではないだろうか?コンサドーレのこれらの見通しは明るいと思えはしないだろうか?無論ルーカスが抜けた右サイドにはドでかい穴が開いているし、能書きを垂れても大卒新人の実力派未知数で計算は立たないのは承知の上だ。26年度からは秋春制に移行するし、コンサドーレに限らず激動で先行き不安な23年は暮れようとしている。それでもコンサドーレに魅力を感じて入団してくれる選手はいるのだ。
最後に鬼が笑うと承知でもう一つ妄言をつぶやかしてもらいたい。
「新大卒4人衆」が戦力として移籍金を稼げるレベルまで成長できたとする。小柏たちの例を考えれば3年~4年で移籍のタイミングを迎えるはずだ。するとどうだろう、秋春制に移行したタイミングとかち合い海外からアプローチしやすい時期に重ならないだろうか?Jリーグがシーズン移行決定について会見した資料で、欧州中堅リーグから欧州トップリーグへ日本人選手が移籍する際の移籍金を20億円とモデルケース上で試算していた。リーグの価値がどこまで高められているかは分からない。ただ、夏の移籍マーケットで動く金額は1兆3,000億円という途方もない額だ。
「レインメーカー」は誰になるのか。そんな夢を見られたらいいなと思っている。
2019年11月03日
あの日頬を伝った涙の理由を探している。 後半アディショナルタイム。ラストプレーで深井のヘディングシュートがゴール右隅に突き刺さった瞬間に溢れた涙は歓喜の涙だとはっきりと分かる。 PK戦にもつれ込み、進藤のシュートが川崎GK新井にキャッチされ沸き立つアウェイゴール裏を呆然と眺めながら零れた涙。 翌日札幌の自宅に帰る山手線で、快速エアポートの中でコンサドーレの健闘を讃える記事を読みながら零れた涙。 悔しくないと言ったら嘘になる。だが断じて悔し涙ではなかった。 達成感?準優勝というクラブ史上に残る偉業達成。だが負けは負けだし、札幌はまだ道半ばだ。 あの日から1週間以上たち、だんだん冷静になるにつれ感情の整理がついてきた。 そこでようやく納得する答えに辿り着いた。 そうだ、嬉しかったんだ。 エレベータークラブと揶揄され、満足な人件費を用意できずに有望選手の引き留めもままならない。 その中で先制ゴールを決めた菅、同点ゴールを叩き込んだ深井、縦横無尽にピッチを駆け回った荒野、残念ながら最後のキッカーとなってしまった進藤。 北海道に生まれ、コンサドーレのユースで育ち、そして決勝の舞台を踏んだ宝物達。 それだけじゃない。決めれば優勝となる5番目のキッカーとなった石川直樹。 キャプテンを任せられる人材がいなかった当時のコンサドーレで、柏からのレンタルの身ながらその重責を担った直樹。 その彼が晴れて完全移籍となり赤黒のユニフォームを身に纏い、このクラブの節目にあのような役回りを担ったのだ。 ここまで来れた。「あの」コンサドーレがここまで来れたんだ。 この嬉しさが溢れ出した涙だったんだ。 涙の数だけ強くなれるよ アスファルトに咲く 花のように 岡本真夜の名曲「TOMORROW」の1節だ。 そう、やっとコンサドーレは分厚いアスファルトの裂け目を突いて蕾を付けたところだ。 もう少し、あと少しで花が咲くところまで来た。 だから「明日は来るよ 君のために」 コンサドーレに関わる「君」たち。 新しい景色を見に行く旅は終わらない。
2017年02月24日
幕が開くと書いて「開幕」。幕を開けて芝居などが始まること。転じて、大会・行事などが始まる、また、それを始めること。だそうだ。読者諸兄にも思い出深い開幕戦があったと思う。例えば2013年。前年惨憺たる結果であえなくJ1降格の憂き目にあい、主力選手の退団も相次ぎ先の見通せない暗闇にいた。その闇を払った砂川→内村のホットライン。例えば2010年。炎のゴールハンターが赤黒の戦士としてもっともゴールに迫った、後半アディションルタイムのヘディングシュート。私がサポーターとしてスタジアムに通うようになって早8年。また開幕戦の記憶が増えていく。
春の訪れの遅い北の大地。一足早く大輪の花を咲かせるのはどちらのチームか。コンサドーレとしては早く1勝を上げ、自分たちの戦い方は間違っていなかったのだと自信を持つためにも大事な初戦。ベガルタとしたらホームの大観衆の前で昨季J2を戦った相手に対し無様な戦いはできない。おそらく両チームとも同じく3-4-3、3バック・Wボランチ・2シャドー・1トップ、のフォーメーションを用いてくると予想されている。いわゆるミラーゲームだ。昨年を3-5-2で戦ったコンサドーレに一日の長があるといえるが、2010年以来J1残留8年目を迎えるベガルタ仙台も、チームの大黒柱であるリャンヨンギをサイドからよりゴールに近いシャドーストライカーとして起用するとのこと。加えて1トップ候補として国見の怪物、平山相太を獲得し攻撃力を増大させている。J1残留という点に対し一日もとい8年の長を誇るベガルタは、コンサドーレの今年1年を占うには最適な相手と言えるだろう。
ミラーゲームを打開するために重要なこと。それは1対1に勝つこと。ピッチ上のあらゆる局面で相対する相手選手をチンチンに翻弄してやればいいのだ。かつてのコンサドーレにはそういう選手がいた。バルデスしかり、エメルソンしかり。個の力で打開し得た1点を守り切る。極論、全34試合すべて引き分ければ勝ち点は34。例年の残留ラインが35ということから考えると、J1はいかに負けないかということが問われてくる。この引き分けを1点でも取り勝ち点3に変えることができるかが残留への分水嶺だ。
昨年のコンサドーレは得点数・失点数でリーグ2位の好成績を収めている。さすがJ2チャンピオンと言える素晴らしい結果だ。得点は少なくなると思うが、いかに失点をしないか。1年かけて磨いてきた守備網をJ1という舞台でも変わらず披露することができるのか。心配である。ただただ心配である。だが、泥臭く、ピッチを走り回り、ただひたむきに勝利を目指す。そんな赤黒の戦士たちの姿を目の当りにしたら、不安はどこかへ行ってしまうことだろう。
ユアテックスタジアムのアウェイゴール裏は完売したようだ。僕らが余計なことを考えずに声を嗄らし、彼らを鼓舞する12人目の選手になることができれば勝ち点は目の前に転がってくると信じている。泣いても笑っても明日。今年も忘れられない1年になる。
2017年01月29日
ぼくサッカーで優勝したよ!…ということでね。お約束となっているからね。
そう、優勝したのである。昨日行われたJ3所属FC琉球戦、我らが北海道コンサドーレ札幌は見事2-1で勝利し、JリーグDAZNニューイヤーカップ 沖縄ラウンドの勝者となったのである。昨季の主力を惜しげもなく投入し、必死に勝利を狙った琉球の波状攻撃に曝されながらも、前半を0-0で折り返し、さらに後半開始に当たり8枚替えという「奇策」を用いきっちりと2点を決め勝利をもぎ取って見せた。昨年に続き勝負強さは健在である。
この試合の殊勲はもちろん菅大輝であろう。この試合では数少ないフル出場した選手であり、結果的に決勝点となった2点目を決めて見せたのだから。かつての古田寛幸や神田夢実、中原彰吾があえいだ公式戦無得点地獄。これをあっさりと打ち破り、落ち着いてゴールネットを揺らして見せた。先輩選手に遠慮してボールを要求しきれないところがあるらしいが、ゴールという実績をもぎ取ったことが自信になってくれることを祈っている。
それにしても見事なゴールだった。久しぶりにボランチに入った河合竜二の身体を張ったタックルから上原慎也へのロングパス。改めて上原の身体能力の高さを見せ付けられた。河合がタックルを仕掛けた時には彼の横を走り抜けたばかりだったにも関わらず、トップスピードでパスを受けそのまま相手DFをぶっちぎって見せた。なるほど彼が身体能力はJ1級と言われるだけある。そして冷静にゴール前でフリーになっていた菅へ折り返すと、お手本のような「ゴールへのパス」がGKとDFの間を抜けていった。若手選手にありがちな力が入ってふかしてしまうということもない。やはり、このルーキーはただ者ではない。今年からルヴァンカップの規定が変更になり、「21歳以下の選手を1名以上先発に含める(決勝を除く)」という一文が追加された。おそらく進藤亮祐が第一選択になると思われるが、これからの活躍次第では菅にも充分チャンスはある。野々村社長が待ち望んでいた「ラッキーボーイ」の誕生が待ち遠しい。
さて、私がこの試合で注目していたのは守備時のフォーメーションだった。スタートのフォーメーションは3-4-2-1。1トップに金園英学を置き、その背後に2シャドーとして菅大輝、内村圭宏を据えた。少し驚きだったのは2試合とも早坂良太をWBとして起用していることだ。てっきりシャドーストライカーとして考えているものと思っていたが、素人とプロの考えは違うということだろう。実際早坂はサイドで躍動し、時折鋭いクロスも上げていた。運動量とクロスの精度が求められるWBとして、十分戦力になるだろう。
話が反れてしまった。そう、守備時のフォーメーションだ。三上GMも四方田監督も「5バックにならない3-4-3を目指す。」とキャンプイン前に語っていた。だが試合の映像からは、昨シーズンと同じく両WBがDFラインに落ちてくる5バックを敷いていたように見て取れた。無論まだキャンプが始まったばかりで、戦術面の落とし込みは二の次になっていることは重々承知している。その中で琉球の猛攻を凌ぎ切ったということは好意的に捉えるべきだろう。…試合を見返せないので守備の時のスライドを確認できないっていうのもあるんですがね。一部4バックになっていたようにも見えたんだけど、基本的には去年と守り方一緒だったと思うんだけどねぇ。中盤でボールを持たれた時は5バックで、サイドで持たれた時は4バックとか使い分けていたんだろうか。
なんにせよ、初戴冠だ。喜ぶとしよう。またサッカーのある、最高の週末がやってきた。
2017年01月24日
アルベルト・ザッケローニ。1953年生まれのイタリア人監督はプロ経験こそないものの、95年当時セリエAに昇格したばかりのウディネーゼを率いてリーグに旋風を巻き起こした。その切り札となったのが3-4-3だったのだ。その導入は偶然出会ったという。…この話は有名すぎるので割愛します。気になる人はググってみてね。簡単に言うと4-4-2で戦っていたが、DFに1名退場者が生じ、そのまま3-4-2で戦ったところユヴェントスに3-0で勝ってしまったというもの。これがきっかけで本格的に3-4-3システムを志向するようになったようだ。この3-4-3を大胆に活用しウディネーゼを3位に押し上げたザッケローニは遂にACミランの監督に登り詰める。そして99-00シーズンのスクデットを獲得するのだ。
と、簡単にザッケローニ氏の経歴を紹介した。この後、紆余曲折を経て極東の島国で彼の運命を変えるあのスパイスと出会うことになるのだが、それはまた別の話。ここではあくまでも3-4-3について語るとしよう。
なぜザッケローニの3-4-3を紹介したか。理由は単純。守備の時にはCBが攻め込まれているサイドにスライドし、逆サイドのサイドハーフがディフェンスラインに落ちて、一時的な4バックを形成するシステムだからだ。守備時に5バックになってしまうことは3バックを用いるシステムの宿痾と言っても過言ではない。いかに全体をコンパクトに保ち、かつスペースを埋めるか。これがザッケローニの処方箋というわけだ。
だが、思い出してもらいたい。ザッケローニが日本代表を率いた時、この3-4-3のシステムは宝の持ち腐れとなったことを。どうしてこうなったのか。それは単純にディフェンスから攻撃、攻撃からディフェンスの時のポジショニングを、選手たちに上手く落とし込めなかったからだろう。当時は4-2-3-1全盛期。バルセロナ式4-3-3も持て囃される様になりポゼッションサッカー華やかりし頃だ。そんな時代に屈強なCFWを中心に置き、彼に絡むようなプレーを求められる2シャドー。残りの7人でボールを拾い潰すというようなリアリスティックなサッカーは、テクニックや創造性に溢れた代表選手たちには馴染まなかったのではないか。そもそも当のザッケローニが「日本に空中戦の文化はない」と明言していたのだから失敗したのも仕方がなかったのかもしれない。
とはいえその3-4-3というシステム自体は文句の付けようはない。それゆえ一番の課題となってしまったのが3バックから4バックへの移行だ。前編で触れた3バックから5バックへの移行の最大のメリットは、「CBが持ち場を離れないこと」だった。攻撃側からすれば敵のギャップを作るためにまず彼らがすることは、ボールを回し相手守備陣のスライドを促すこと。常に正しいポジショニングを取ることは困難を極める。このリスクを最大まで減らしたのが5バックだったわけだ。サイドプレイヤーは対峙する相手に合せて下がってくるだけでいい。あとは後ろで待ち構えるCBと協力してボールを奪い、カウンターに繋げることができれば少なくとも相手陣内までは押し返すことができる。
だが、プレーのレベルが上がるJ1の舞台ではサンドバックになってしまう危険性を孕んでいるため、コンサドーレ三上GM・四方田監督ともにシステムのレベルアップを図っているのだ。そう考えればSBの経験のある田中雄大の獲得にも頷ける。右WBのマセードもブラジル時代はSBだった。さらに考えを進めていくと左WBのバックアップは石井謙伍であり、右WBのバックアップは上原慎也ということになる。そう、彼らもSB経験者だからだ。改めて思うのが堀米悠斗の移籍である。ザッケローニ式3-4-3であれば、左WBとしての出場機会は彼が考えるより多かったのではないかと悔やまれるのだ。むしろボランチもこなせる分重宝されたのではないかと思う。そもそも田中の獲得は堀米の移籍に端を発している。今更言っても詮無いことではあるが、昨年彼の背番号を背負って戦ったものとして恨み節の一つも言いたくなるのだ。
さて前編ではアントニオ・コンテ、後編ではアルベルト・ザッケローニと異なる3-4-3を紹介してきた。攻撃の手法としてコンテを、守備の手法としてザッケローニを「良いとこ取り」することができればJ1残留が見えてくるという感じだろうか。そんな中でいよいよ明日ニューイヤーカップ・ジェフユナイテッド千葉戦が組まれている。私が見ることができる試合は28日のFC琉球戦になりそうだが、自分の予想が当たっているかも含めて結果を楽しみに待ちたいと思う。
2017年01月23日
去る21日、北海道コンサドーレ札幌2017年初の対外試合が行われた。30分ハーフで行われたこの試合は開始早々失点を許すも、都倉賢のチーム初ゴールを含め計6点を決め6-1というスコアで大勝した。相手が大学生ということもあり開始早々の失点は猛省しなければならないが、新加入の兵藤慎剛や金園英学もゴールネットを揺らし実力を示してくれ、実りの大きな試合だったといえるだろう。
この試合はWボランチに1トップ2シャドーという形でスタートしたと報道にあった。そうであるならば、やはり今年のフォーメーションは3-4-3.そう「5バックにならない」3-4-3が軸になるということだ。以前の記事「J1残留にむけて」で私は「ぼくのかんがえるさいきょうのこんさ」とでも言うべき3-3-1-3のフォーメーションを書いた。アップして初めて「これ、バルセロナじゃん!?」と驚愕したが後の祭りだ。そう現実的に考えれば、昨季用いた3-5-2のトップ下をトップに挙げた3-4-3がベストであるに決まっている。なによりチーム戦術の継続性がJ1残留には欠かせないからだ。そこで改めて昨年用いた3-5-2について見直し、3-4-3がどのようなシステムであったか考えていきたいと思う。
まずこれを見ていただきたい。
コスタ
アザール ペドロ
アロンソ マティッチ カンテ モーゼス
ケーヒル ルイス アスピリクエタ
クルトワ
これはカタカナが並ぶ通り海外のチームのスターティングメンバーである。フォーメーションは3-4-3だ。開幕時は4-2-3-1でスタートしたものの守備に安定感を欠き、そこで監督の慣れ親しんだ3-4-3を導入したところ、これがチームにフィット。クラブ新記録の13連勝を飾り、現在17勝3敗1分と2位トテナムに勝ち点6差をつけて首位を快走している。そんなチームのスタメン。もう、察しがいい人は気づく頃だろう。そう、イングランドプレミアリーグ所属、チェルシーFC。昨季10位と低迷しながらもある男の監督就任を機に不死鳥のように甦ったリーグ屈指の名門チームである。その男の名はアントニオ・コンテ。ユヴェントスを3連覇に導き、イタリア代表監督も務めた名将である。
…もったいぶったけども、みなさんご存じだよね。海外サッカーに疎い私はつい最近知ったんだけどさ。そんな状況で解説なんておこがましいとは重々承知ですが、コンサとチェルシーの共通点が多いもんで…。おそらく今季のコンサドーレは、このコンテ式3-4-3を参考にチームを組み上げていくんじゃないかと思う。そこでそのキーマンを5名、、、その、footballchannel(https://www.footballchannel.jp/2016/11/24/post186505/)の記事を参考にして、彼らはコンサドーレでは誰に当たるのかを紹介していくことにする。
●セサル・アスピリクエタ(右CB)
「本職は右サイドバックにもかかわらず、ジョゼ・モウリーニョ体制下では左サイドバック、そしてコンテ監督のもと3バックの右センターバックにコンバートされた。対面したサイドアタッカーを的確に封じることができる、いわゆる“守備のできるサイドバック”として知られているが、その守備力はセンターバックに移ってからも変わらない。俊敏性と危機察知能力の高さで相手FWからボールを奪い、必要に応じてサイドバック然として持ち上がることができる。」…らしいですよ。身長は178㎝とCBとしては小柄ではあるが、守備力は折り紙付きな様子。彼をコンサドーレに置き換えるとすれば、やはり菊地直哉になるだろう。2015年のサガン鳥栖でセンターバックの中心を担った実力者である。昨季も夏場からの加入ながら違和感なくフィットし、DFラインを支えた。特筆すべきはボランチをこなせるレベルの技術の高さである。最後尾からのロングフィードは左サイドの福森と並んでコンサの攻撃の軸となった。2017年も昨季同様の活躍が望まれる。
●ダビド・ルイス(CB)
「3バックの中央にポジションを取ることで、持ち前のパスセンスやフィードの正確さが生き、攻撃面での貢献が顕著となった。ヘディングにはめっぽう強いタイプで、負傷明けでベンチを温めているキャプテンのジョン・テリーに比べればスピードにも優れるため、DFラインを高く設定できるのも利点のひとつである。」…とのこと。ヘディングにはめっぽう強いタイプと言えば増川隆洋だが、新加入の横山知伸も負けていない。手元にあるELGOLAZO year book2016によると、昨季の増川は自陣における空中戦は125回記録し勝率は60%、他方横山は42回記録し勝率73.8%と勝率だけで言えば増川より優れている。横山の42回はMF江坂任と並びチーム4位の数字であり、決して見劣りする数値ではない。横山も菊地同様ボランチ経験があり、事実昨季はボランチでの起用がほとんどだった。スピードという面では増川より優れていると思われる彼の加入は、今季のコンサドーレの守備陣をスケールアップしてくれるだろう。その一方で、彼が活躍してくれるか否かがチームの浮沈を左右することになる。
●ビクター・モーゼス(右WB)
「持ち前のスピードでサイドを駆け上がったかと思えば、抜群の運動量で守備にも参加する。6試合連続の完封勝利に裏には、モーゼスの貢献が大きいことは明らかである。ハードワークが求められるウイングバックのポジションにおいてコンテ監督の要求を完全に満たしている。」…です。それに付け加えるとするならば、キレのあるステップを武器に失わないドリブルで鋭く侵入するアタッカータイプであるというところだ。その特徴を活かした「カットイン」が右サイドの特徴だ。カットインと言えばマセードの特徴でもある。昨年加入した陽気なブラジリアンは精度の高いクロスとリズムに乗ったドリブルで相手DFを切り裂いた。故障が重なりフルシーズンの活躍はできなかったものの、チームクロスランキングでは3位、ドリブル企図ランキングでは5位にランクインしている。その彼と切磋琢磨しているのが石井謙伍だ。クロスランキングでは福森に次ぐチーム2位、ドリブルは内村圭宏と並びチーム3位となっている。個人的に驚いたのはその成功率である。クロスの成功率は25.7%、ドリブルの成功率が49.2%。マセードのクロス成功率が28.8%、ドリブル成功率が55.4%。なぜ比較するようなデータを提示したのか。ただ単純に自分のイメージより石井の数値が悪くなかったという点に尽きる。J1屈指のドリブラーとして鳴らしている斉藤学のドリブル成功率が53.5%であり、彼ですら5割を少し超える程度である。そう考えれば石井も決して悪くないのだ。運動量には折り紙付きの二人。彼らがどの程度攻撃にアクセントを加えてくれるか。彼らのドリブル突破に注目したい。
●マルコス・アロンソ(左WB)
「希少な左利きでキックの精度は正確。攻撃のセンスも高く、守備面では対面のウイングへのマークも怠らない。」…選手です。モーゼスがアタッカータイプなら彼はSB。ペナルティーエリアの角で左ウイングのアザールや1トップのコスタとボールを回して崩していくのが、左サイドの特徴と言える。左利きで「SB」と言えば、一昨年のJ2クロスキング田中雄大である。ヴィッセル神戸では定位置を掴むことはできなかったが、左足の精度は中々のもの。新潟へ移籍してしまった堀米悠斗もいいクロスを上げていたがミドルシュートの精度は今一つであった。その点田中は問題ない。ペナルティーエリア左隅から放たれる弾丸シュートは惚れ惚れするというより怖気の走る凄まじさだ。だが、彼の問題は守備。アロンソのようにサイドに蓋をすることができるのか。見ものである。
●エデン・アザール(左ウイング)
「好調の要因は守備の負担軽減にある。4-2-3-1ではサイドの守備に走る時間が長く、攻撃面で100%の力を発揮できなかった。しかし、3-4-3では中盤の4枚と3バックが献身的に守備をこなしてくれるため、アザールは攻撃に専念できるようになった。守備から解放されたアザールはセンターフォワードのジエゴ・コスタとゴールを荒稼ぎ。新布陣採用後は、2人で6試合10得点を叩き出している。」…絶好調みたいですね。2年連続プレミアリーグで14点を挙げたベルギー代表のストライカーは守備から解放されることで全力を発揮できるようになったようだ。サイドを主戦場に相手を恐れずドリブル突破を試みる。そして足の振りの早いシュート。やはり彼を当てはめるとしたジュリーニョしかいない。ドリブルの成功率こそ33.3%と低いが、12ゴールを挙げた得点力は非の打ち所がない。ブラジル人特有のトリッキーなプレーはJ1でも十分通用すると思われる。…思われるんだよ。
とまぁ、このように今年のコンサドーレとチェルシーを重ねてキーマンを紹介してきた。そのうえで予想フォーメーションを書き殴るとすれば、以下のようになる
都倉賢
ジュリーニョ 早坂良太
田中雄大 マセード
宮澤裕樹 兵藤慎剛
福森晃斗 横山知伸 菊地直哉
クソンユン
右ウイングの早坂とボランチの兵藤、彼らのオフザボールにおける献身が中盤と前線をうまくつなげてくれるはずだ。不確定要素は多いものの、そんなものは開幕前だ、多くて当たり前だ。そもそもジュリーニョや都倉が得点を量産してくれるとは限らないからだ。より一層コンテ・チェルシーと化した2017版コンサドーレがJ1に旋風を起こしてくれることを祈っている。
…とここで終われば綺麗なのだが、そうは問屋が卸さない。コンテ式3-4-3はひとたび守備に回るとどのフォーメーションは5-4-1となる。両WBが最終ラインに吸収され、ウイングがWBに代わりボランチの横にスライドする。がっちりと2ラインを敷き、相手を待ち受けるのだ。
変更前のチェルシーの布陣は4-3-3. サイドバックのやや積極的な攻撃参加が必要とされていたことや、攻守の切り替え直後のロスト、大外へボールを展開している途中でのロストはバランスを崩すきっかけとなり守備に安定感を欠いていた。そこで5バックだ。このシステムで改善された点は、センターバックが持ち場を離れないことである。そのうえWBが相手SHを、シャドウが相手SBを対応してくれるため、ケーヒルやアスピリクエタの左右CBはニアゾーンへの侵入口を埋めるだけとタスクを簡素化されることになる。カットインやトップ下を絡めた攻撃は2つのラインが距離を縮めて、ごちゃっと密集する事でフィニッシュを許さない。実際ゴール前のごちゃごちゃは昨季のコンサでもよく見られたと思う。だがこのフォーメーションでは4-1-4-1(4-3-3)と対戦した場合、サイドの崩しや中央の密集で相手に支配を許すことはないが、浮いたアンカーを軸にMFブロックの前でポゼッションを許してしまう。そうなれば、そこを軸にポゼッションを許しサンドバックのスタートになる。無論チェルシーならカウンターの精度も高く、パスカットから容易く相手ゴール前に迫ることができるだろう。そう、昨季のコンサドーレのように。
だからこそ5バックにならない3-4-3を三上GMも四方田監督も志向しているのだろう。昨シーズンの戦い方を踏襲したうえで、どのように進化させていくか。守備的な3-4-3.そこで思い出されるのは「Udinese dei miracoli」。ジャーマンタワーことオリバー・ビアホフを中心にした「奇跡のウディネーゼ」だ。そのチームを率いたのは誰だったか。次回は大のワサビ好きであったイタリア人監督を紹介し、「5バックにならない」3-4-3を考えていきたいと思う。
プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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