注意報・警報は発令されない

2009年01月22日

今日も相変わらず、役にも立たない「気象細事記」をお送りします。 

しばしば誤解されて使われている言葉に、「気象庁から○○注意報や△△警報が発令された」という言い方(書き方)を見かけますが、これは間違いです。
正しくは「発表された」という言葉を使います。


「注意報」というのは、「災害が起こる恐れがある」(だから注意する必要がある)ことを「報じる」、つまり「知らせる」ことです。
「警報」も同様に、「重大な災害が起こる恐れがある」(だから警戒する必要がある)ことを「知らせる」ことです。
「知らせる」だけであって「命令」ではないから、「発令」にはなりません。

これらの、「災害が起こる恐れがあるよ」という「お知らせ」を受けて、自治体(市町村長)は住民に対して「危険だから避難した方が良いですよ」という【避難勧告】や、「避難しなさい」という【避難命令】を出します。
こちらは強制力を伴う権限を発動する「命令」になるから、「発令する」と言っても構わない訳ですけども。
 

自治体(の長)には、住民を「避難させる責務と権限」があります(だから、選挙という手段で互選します)が、気象庁には住民を避難させる権限が無いので、「危険性を知らせる」だけです。
「知らせる」だけしか出来ないのだから、知らされた方は自己責任で行動しなければなりません。

命令じゃないので注意する義務は無いからといって、
雷注意報が発表されている時に注意しないで雷に当たったりしたら、死んでも笑われるだけだし、
洪水注意報が発表されているのに川の中州でキャンプしてたら、救助に向かわされる人達はいい迷惑だし、
なだれ注意報を無視して雪に埋まっても誰も助けに行けなくて、春になったら腐った死体が川に流れて魚に食われます。

厳密に言うと、「報」という言葉には「知らせる」という意味が含まれているし、「発表」という言葉は「公衆に周知させる」という意味ですから、「○○報を発表する」と言ったら「お知らせを知らせる」という意味になり、「馬から落ちて落馬する」のと同じ言い回しになってしまいます。

なので、「注意報をする」とか「警報をする」と言うのが正しい日本語であり、法律の文言では「予報及び警報をしなければならない。」とか、「警報をしてはならない。」と書かれています。
そんな日本語、誰も使わないですけどね。
 

新聞などでは、相変わらず「発令」が使われています。もしかしたら、「空襲警報発令」の時代からの名残なのでしょうか。
「空襲警報」なら、「避難しろ」とか「応戦しろ」ですから「発令」でもいいんですけど・・狩猟民族ではない故に主体性が備わっていない民族の気質として、自分で判断するよりもお上から命令された方が安心なんでしょう。不都合が起こったら他人の所為にすれば気が済むんですから。
 

他にも、「立春になったら暖かくなる」とか、「大寒の日は一年の中で一番寒い」などと、勘違いな解釈がされている場合もありますが、後日に機会があれば説明するかも知れません。


日高地方・某町のアメダス観測所
飴出す駄菓子屋
この横に樹が植えられていましたが、だんだん伸びて観測に支障を及ぼしそうになり、伐採されたのか移植されたのか・・無くなりました。



post by 雁来 萌

22:58

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