2010年08月04日
夏になると 太平洋戦争に関係した本が書店の店頭に数多く並ぶようになります。 単に戦争をテーマにしたエンターテイメントな小説もあれば、史実を地道に検証した本もあり、その軽重は様々だけれども、あの戦争があった事さえ知らない若者がいるこの時代、テレビでも書籍でもインターネットでもこのようなテーマで話をする事は大切だと思います。
放送作家だった著者の小説デビュー作です。 放送作家だけに 作品の構成はしっかりしており、読ませ方がわかっています。 2009年 最高に面白い本大賞 の第1位だそうです。 こんな賞があるのを この本の帯で知りましたが、それだけの値がある本だと思います。
妻子のために、何としても生きて帰ろうとした ゼロ戦搭乗員のドラマです。 読み進めながら 途中で何度も泣きそうになりました。 あえて 作品の内容や感想は書きませんが(長々と書いたのだけど、消してしまいました)、読んで決して損は無い 一冊だと思います。 この本は 多くの参考文献を基に書かれています。 それだけに どこかで読んだことがあるようなエピソードが あちこちに出てきますが、そうしたマイナス面を補って余りある出来栄えとなっています。 ノンフィクションではありませんが、基本的に史実に基いて書かれているようですし、あの悲惨な戦争の一面を知るよすがになると思います。 太平洋戦争や特攻隊を知らない方、戦争に関連した本をあまり読んだ事の無い方にとっては、読みやすさも含めて 良い入門書となるのではないでしょうか。 また、戦争や特攻に限らず、戦前戦後における新聞などのジャーナリズムに対する批判、誰一人責任を取ろうとしない官僚主義に対する批判、戦後教育に対する批判など、様々な問題提起もなされています。 そうした点にも 同感できる部分が多々ありました。