2008年08月07日
バルセロナオリンピックの開催直前 1992年5月の刊行です。 著者は ヴィヴ・シムソン と アンドリュー・ジェニングズ という英国人で、 広瀬 隆が 監修し 解説を書いています。 16年前の夏に一度読んでいるのですが、北京五輪も始まったという事で、 本棚の奥から引っ張り出して もう一度読んでみました。
この本は、オリンピックの裏側 暗黒面をリアルに書いた ノンフィクションで、一貫して追求されるのは「汚れた金」。 その主張は、次の4点に要約されます。 神話 ~ オリンピックは、公平平等、フェアプレーの精神のもとに若人が競い合う人類の祭典だというのは、今や幻である。 真実 ~ 今やオリンピックは12の巨大多国籍企業の玩具であり、ドーピングは野放しの状態である。 「クラブ」 ~ オリンピックをコントロールしているのは特権的立場を享受している少数の「クラブ」のメンバーである。 指導者 ~ オリンピック・ムーブメントの支配者は、長年フランコ将軍に仕えたファシスト政治家である。 主な登場人物は ファン・アントニオ・サマランチ (IOC会長) ホルスト・ダスラー (アディダスの創設者) ジョアン・アヴェランジェ (FIFA会長) プリモ・ネビオロ (国際陸連会長) など。 これらの人物の権力闘争の歴史や実態が、かなり具体的に赤裸々に書かれています。 さすがに16年も経つと、引退したり 亡くなったりして、皆 過去の人になっていますが、人が替わった現在も、その内情や 実態は 当時と基本的に変わっていないでしょう。強大な権力を、莫大な利権を、そう簡単に手放すはずがないですから。 ただ、解説で広瀬隆も書いていますが、本当の問題はもっと深いところに、表からは決して見えないところにあるのでしょう。サマランチなども、実際は 表には決して出ることのない黒幕の 操り人形だったのかもしれません。 オリンピック誘致に関わるルールやドーピング規制などは年々厳格化されていますが、そんな事は些細なこと。商業化などという言葉ではあらわせない深刻な問題がある、というのがこの本の主張だと思います。 また、全体に共感し納得できる部分が多いのですが、サマランチとファシストとの関係など、必要以上に強調しすぎている気がします。 アラブやアジアに対して差別的な見方や主張が多いように感じる部分もあり、緻密な取材に基いた力作だけに、その辺は残念でした。